民明書房を探せ

皆様、民明書房という出版社をご存じですか?先日、ネットを見ていたら、渋谷のパルコで民明書房のトランプを手に入れて七並べをしたという記事が紹介されていて、懐かしいなと思い、筆を執りました。

民明書房とは、1980年代中頃、集英社の少年週刊ジャンプで連載されていた、宮下あきら先生執筆による“魁‼男塾”という格闘漫画で多く紹介されていました。1926年創業の出版社で、創業者は大河内民明丸です。大河内民明丸が世界各地の格闘技類の起源、秘密結社、風習等を取材した出版物を発行していることで知られていました。

例えば、撲針愚、グローブの代わりにスパイクをまとった鉄球を手に付けてパンチ以外でも頭や足を使ってもいいボクシングの事ですが、これを民明書房によれば“別名「ピカレスク・マッチ」と呼ばれるもので、通常のグローブの代わりに鋭利な刺のついた鉄球を手につけて行なうボクシングである。その起源は古代ローマ帝国、残虐好みで悪名高い、かのネロ皇帝の発案にあるという。

私が小学生の頃、民明書房の出版物が史実だと思い込んで、もっと色々と格闘技の起源や秘密結社等を深く知りたいと思い、民明書房の本を探しに書店を渡り歩いたものでした。しかしながら、どこの書店に行ってもありませんでした。私だけでなく、当時の多くの小中学生達は、民明書房の出版物を求めて書店に駆け込んだみたいでしたが、どこにもありませんでした。当時はネットというものが存在していませんでしたので、途方に暮れていました。

実際は民明書房が、宮下あきら先生が考案した架空の出版社で、事実と虚構を巧みに利用して、あたかも事実のように壮大に仕立て上げたものでした。その事実を知るまで数年掛かりました。ゴルフを使った技が出た時、解説で“棍法術最強の流派として名高いチャク家流に伝わる最大奥義。 この技の創始者 宗家二代 呉 竜府(ご・りゅうふ)は 正確無比の打球で敵をことごとく倒したという。 この現代でいうゴルフスイングにも酷似した 運動力学的観点からいっても 球の飛距離・威力・正確さを得る為に もっとも効果的であることが証明されている。 ちな みに ゴルフは英国発祥というのが定説であったが 最近では前出の創始者がその起源であるという説が支配的である。民明書房刊「スポーツ起源異聞」”という記事を読んで、流石にこれは虚構だという事を気づかされました。ゴルフの中国起源で創始者が呉竜府はないでしょう。これを読んでもまだ信じた人がいたようでした。それでゴルフの起源はイギリスだと言うクレームのハガキや電話が大人の読者から集英社に送られたりして、宮下あきら先生も驚いていたようでした。民明書房の解説は虚構ではあるが、「嘘か本当か微妙な境目がミソ」と宮下あきら先生が語るように、いかに事実であるかのような解説が多数ありました。

“魁‼男塾”自体は、1991年の中頃に連載が終了しましたが、その後2001年に“暁‼男塾”が連載され、作中に大河内民明丸本人が登場しました。その頃になると解説が少し雑になってきて、如何にもインチキだという事が分かりやすくなりました。民明書房はというと、2004年に“民明書房大全”として今まで登場した記事のまとめた物が発行されました。私が買った当時は1500円位でしたが、現在アマゾンのコレクター商品で49,998円の高値が付いていましたので色々な意味で唖然としました。

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